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BUHI

いろいろ

新年

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 

 昨年は慌ただしく時間が過ぎ、結局ペースをつかめなかった。今年は周りに振り回されず自分のペースを維持したい。あれこれと抱負みたいなものを考えたが、書くことのほどでもない。

 年末年始は何もしなかったので、本ばかり読んでいた。何冊か面白い本があった。一番印象的に残ったのはウェルズ・タワーの「奪い尽くされ、焼き尽くされ」で次にドストエフスキーの「死の家の記録」だ。新年早々縁起でもない題名だが・・・

 「奪い尽くされ、焼き尽くされ」は、不満たっぷりの現代人を描いた短編集でロクでもない話ばかりが続く。感傷的でロマンチックな感性はひとかけらもない。そこそこに不幸せで投げやりでイライラした現代人のやるせない一コマが描かれる。それだけなら何も面白くないが、全編通して渇いたユーモアに満ちていて、いちいち面白い。腹を抱えて笑うといった類のものではないが。何がというわけではないがこれぞアメリカ文学と思える。翻訳も良いと思う。

「僕の継母は水のない噴水のところにいて、映画撮影をしている若いクルーを見ていた。僕はティータンクを父の足元に置いて、小走りで彼女のところに言った。久しぶりに会ったルーシーは、一段と疲れて、老けていた。彼女を見て、『ご婦人』という言葉がまず心に浮かんだ。少なくなってばさついた髪、しみが浮いた頬、カチャカチャ音を立てるブレスレットの数々と口紅、口の周りの細いしわに漏れ出している不穏なサンゴ色のファンデーションの色合い―それらをまとめる言葉だ。右目は血走っていて、涙が溜まっていた。僕たちは抱擁した。寒いのに、彼女は薄手の黒いトップの上にラメの入ったショールをかけているだけで、彼女の硬い腕に走る鳥肌が感じられるくらいの薄着だった。」

 何も特別な部分ではないが、こんなやけに毒々しい冷たい目線の描写が多い。

 ウェルズ・タワーの他の本がないかと調べたがこれ一冊だけらしい。もっと読んでみたいが、かなり時間をかけて書くタイプの作家らしい。長編を執筆中とのことで、出版されたら必ず読みたい。